第510回の地学ハイキングは、NHK「ブラタモリ」で秩父が取り上げられたその翌日。まさにその秩父を、出演した小幡さんの案内のもとに一日歩いた。
例年、7月の地ハイは猛烈な暑さとなるだが、この日も例にもれず、秩父盆地には強い陽射しが照りつけている。小幡さんが巡礼姿で現れるのかも…と思っていたのだが、「ブラタモリ」でのあの衣装はNHK所有のものとのことで、手元にはないのだそうだ。
集合した浦山口駅から荒川を渡り、札所25番の久昌寺へと向かう。その途中では、そこから見える尾田蒔面、羊山面、影森面、大野原面、柳田面等の段丘面を見たり、歩いたりしながら、大昔の荒川の流れと氷河時代の気候変動などについて考えた。その途中にはたくさんの石仏や石碑があって、その石材にも着目して見学した。
久昌寺で古秩父湾に堆積した角礫岩・角礫質砂岩の露頭や弁天池を見学し、再び浦山口方面へ。来るときには荒川を久那橋で渡ったのだが、帰りは旧久那橋の方をまわった。ここには橋脚の根元部分が残されていて、旧久那橋が薄い角礫岩の上に立っていたことが見て取れる。その後、旧久那橋の橋脚を利用して作られた飛び石を使って荒川の右岸へ渡り、浦山口キャンプ場へ。途中、古秩父湾の堆積層があちこちに顔を出している。浦山口キャンプ場は営業中で、たくさんのテントが並び、浦山川の流れで涼を取っている人たちがいる中を通過させてもらって、浦山口駅東の不動名水へ到着。この湧き水は、影森面を作っている段丘堆積物の中の地下水が、下位にある秩父帯のチャートの上面から流れ出しているとのこと。
冷たい水で生き返ったような気分になったあとで待っていたのは、この日最大の急登だった。影森面の段丘崖・比高約30mはわずかな距離ではあったけれど、この暑さではなかなかきつい登りだったようだ。登り切ったところにある浦山歴史民俗資料館で昼食。
昼食後は橋立浄水場や影森用水乃碑などを見ながら、橋立鍾乳洞のある札所28番・石龍山橋立堂へとゆっくり坂道を上がった。休日のためか、驚くような観光客の多さである。橋立堂裏の石灰岩の岩壁を背にして小幡さんの説明が始まった。タモリさんもやってきた現場である。石灰岩の基部にある黒っぽいえぐられた岩石がポイントだ。玄武岩である。玄武岩の火山島の上にサンゴ礁ができて、それがプレートにのって運ばれてきて付加体となって現在に至る、という説明はなんともダイナミックだ。
鍾乳洞の見学はパスして、所々に秩父線の電車を撮影しようと待ちかまえる“鉄ちゃん”がいる武甲線の廃線跡を歩いて、最後の見学地・札所27番龍河山大淵寺へ。暑さでバテバテの体に大淵寺の延命水が浸みいるように潤っていった。 暑い暑い7月の秩父盆地の地学ハイキングだった。
{本庄高校 栗原 直樹}(参加者31名)
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<秩父札所25番久昌寺観音堂>
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<秩父札所28番橋立堂>
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