春日部高校の平社さんの案内で、春日部市南部の武里団地に地盤沈下の状況を観察し、地質との関係を調べました。
埼玉県東部は昔は米どころとして知られていましたが、近年は住宅や工場が密集する地域に大きく変貌しました。そのために、大量に地下水を汲み上げる一方で、舗装や排水により地下に浸透する水が減り、水分を含む粘土層が収縮して地盤沈下を生じました。沈下量の大きいところでは浸水したり、水道管や下水管、ガス管が破損する被害も出ました。
武里団地は、1966(昭和41)年に入居の始まった6200戸のマンモス団地で、春日部市南部の主に水田だったところに建てられました。ここでは、入居間もないころから地盤沈下がおこりはじめました。建物は地下の安定した地層に杭を打って建てられたので、元の高さを維持しています。地盤が沈下した分、地面と建物との高さのずれができて、建物が浮き上がったようになってきました。仕方がないので、繰り返し入り口に階段を付け足して調整が行われています。
地盤沈下の様子を観察したあと、グループに分かれて追加された階段の段数を調べて、地図に書き込んでみました。また、建物のヒビ割れのスケッチ、その他気づいたことも記録しました。
午後は春日部高校に移動し、団地全体の階段の段数を1枚の地図にまとめてみました。各班で気づいたことの発表の後、“等段数線(等沈下量線)”を描き、地下地質と比較検討してみました。
この付近は標高10m弱で、沖積層の厚さが40〜50mあります。沖積層は海抜−10mよりも深いところは一様に貝殻を含むシルト(泥)があり、縄文海進の海成層だと考えられます。それよりも上部は場所によって砂や粘土になっていて、自然堤防や後背湿地といった
河川堆積物のようです。この自然堤防の砂の地層が厚いところで沈下量が少なく、後背湿地の粘土のところでは大きく沈下していることが推定されました。建物のヒビ割れは不当沈下によるゆがみを表しているようでした。
自然環境と開発について、参加者みんなで調べて考えることができました。
{小幡喜一}(参加者 25名)
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地盤沈下で抜け上がった建物を観察 |
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付け足された階段を調べる |
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