TOP ■ちちぶ総会紹介シリーズ ■(1)魅力たっぷり秩父札所の地形・地質 
日本地質学発祥の地・秩父(1)

   魅力たっぷり秩父札所の地形・地質

 最終更新日:2023年3月25日

 

 秩父札所三十四ヶ所観音霊場は1市3町一巡約100 km,西国三十三ヶ所・板東三十三ヶ所と合わせて,日本百観音霊場といわれています。江戸時代,秩父は江戸から約70 km,関所もなく,歩いて3日ほどのところにある盆地で,周囲と隔絶された感があり,札所一巡7日ほど,絶好の行楽地でした。 1678(延宝6)年から度々江戸に出開帳(観音像を展示するキャンペーン)が行われ,建部涼袋(1744,延享元)「秩父独案内記」などのガイドブックが出版されました。1750(寛永7)年の午年総開帳(厨子が開かれ,観音像に御手綱が結ばれ,間接握手ができる)には年間7〜8万人もの巡礼が来訪しました。当時,西国三十三ヶ所は年間3万人,四国八十八ヶ所は年間2万人といわれます。  秩父巡礼には,様々な地形・地質や石造物に出会える魅力があり,日曜地学ハイキングでも人気があります。
 札所のうち25か所は河岸段丘にあります。高位段丘の札所23番音楽寺からは,秩父市街の段丘地形と東から南の山地を一望できます。中位段丘から下低位段丘にかけての段丘崖およびその裾には11番常楽寺など5か所があり,低位段丘を見晴らし,湧水もあります。残りの19か所は低位段丘にあります。17番定林寺は段丘面上の中州跡に観音堂があり,東側の段丘崖下にかつて溜池だった流路跡がのびています。19番龍石寺は,荒川の激流が洗っていた秩父盆地中新統の硬い角礫質砂岩が段丘面上に露出した岩盤の上に観音堂が建っています。
 盆地西部では,秩父盆地新第三系が険しい岩山をつくっています。31番観音院は,彦久保層群牛首層の円礫岩砂岩互層がつくる高さ30 mの断崖に清浄の滝がかかり,あちこちに窟屋(タフォニ)がみられます。32番法性寺は秩父町層群奈倉層の砂岩が露出し,懸崖造りの観音堂の裏や奥の院に通じる月光坂には岩窟(タフォニ)がみられます。鎖場のある月光坂を登ると,「お船岩」という絶景の岩稜があり,船尾にあたる頂上の岩窟に大日如来像が座し,やせ尾根をくだった船首部分にお船観音像がたっています。
 盆地東側の三波川帯には.水平な黒色片岩に2番真福寺,蛇紋岩に4番金昌寺,斑れい岩に6番卜雲寺が建ちます。南側の秩父帯には,切り立ったチャートの岩峰に26番岩井堂,高さ65 mの石灰岩の絶壁を背にその下に現れた玄武岩に28番橋立堂が建っています。そして,盆地北側の秩父帯に位置する,結願寺の34番水潜寺境内の石灰岩の露頭には「水潜りの岩屋」とよばれる鍾乳洞(現在は入洞禁止)が口を開き,「長命の水」が流れ出しています。

(埼玉支部 小幡喜一)

 


秩父札所28番 石龍山橋立堂
(2017年7月16日,第510回 日曜地学ハイキング)


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