朝からポカポカの快晴。11月とは思えないハイキング日和の豊春駅に、27名が集合し地学ハイキングがスタートした。坂道をヒントに土地の高低差に注意しながら歩きつつ、最初の観察ポイントである徳力小学校前に到着した。この地域は大雨の際に冠水等が起こりやすく、その理由として河床の方が高い天井川になっていること、周囲の台地に挟まれた低い地形で水が集まりやすいことなどの説明を受けた。再び坂道を登り台地の上を歩いていくと、もう一段高い土地が見えてくる。台地が2段構成になっていることを確認し、高い方の台地に登ると2つ目の観察ポイントである玄奘塔(げんじょうとう)に到着した。
玄奘塔は3つ目の観察ポイントである慈恩寺の一部で、三蔵法師(玄奘三蔵)の遺骨が分骨されている場所である。ここで、台地と低地がどのようにして形成されたか、2段構成になっている台地が断層により形成された変位地形であること、そのもととなる元荒川構造帯の説明を受けた。このあたりの変位地形は急な崖ではなく、緩やかな斜面となっていることから、断層崖ではなく、比較的柔らかい地層が断層のずれによって緩く折れ曲がって形成される撓曲崖(とうきょくがい)であるとのこと。そのずれが10万年で約2mであることから、1年で約0.02mm程度であることが分かる。低地と低い台地の高低差が約2m、低い台地と高い台地のずれが約2mであることから、4m程度の高さの違いを意識しつつ低地に下り、再び坂道を登りながら3つ目の観察ポイントである慈恩寺を目指す。
玄奘塔と同じく高い台地上にある慈恩寺でしばし拝観した後、切り込みの形状によっていくつかのタイプに分けられるイチョウの葉の形を観察した。再び高い台地から低地に下りていくと岩槻北陵高校前に到着。この周辺も徳力小学校と同様に浸水被害が発生しやすい地形であるとの説明を受け、慈恩寺親水公園へ向かった。
この頃には既に、日差しが「暖かい」ではなく「暑い」になっており、皆さん一斉に木陰を探す。オオバンの鳴き声を聞きながら昼食をとった。昼食後に集合写真を撮影し、古隅田川の説明を受ける。かつての古隅田川は旧利根川の1つで非常に川幅が広く、現在とは逆向きに流れていた。またその頃は暴れ川として頻繁に洪水を発生させ、そのために周辺に洪水によって形成された地形が観察できるとのこと。その破堤地形であるクレバススプレーは、日本での研究が進んでいない分野で、日本における最新の研究について伺うことができた。
公園を出発し、4つ目の観察ポイント古隅田川公園遊歩道に向かった。堤防の上を歩き、洪水による堆積の繰り返しにより、川が側方の後背湿地よりも高い天井川になっている様子や押堀(おっぽり)の跡地を観察した。また、保存のために移設された埼玉県で最古の石橋の1つであるやじま橋も観察した。 この橋は、安山岩でできているのとのこと。堤防が築かれた時代が不明であるということを聞いて、堤防に植えられていた大木の切り株の年輪から築堤時期を調べられないか?などと話をしながら歩いた。
海善院前を通って、川から放射状にのびたクレバススプレー内を歩く。平坦な道になるように同じ高さの地点に道を通している為、扇形の孤の形で道がつくられているのが確認できた。また、これらが1つのクレバススプレーではなく、複数のクレバススプレーが合体しているという説明を受けた。
最後に、水を溜めた状態で現存する押堀を金網越し(どこかに開けた観察ポイントがあれば良いのに!)に観察し、豊春駅に戻った。朝の時点では「暖かくて歩くにはちょうど良いね」などと話していたのに、思いの外汗だくになったが、最新の研究内容なども聞ける充実した1日だった。
{地ハイ係 竹内幸恵}(参加者26名)
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慈恩寺親水公園にて集合写真 |
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古隅田川の堤防上にて |
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