地学団体研究会埼玉支部

日曜地学ハイキングの記録


 第241回〜第250回(1990年8月〜1991年7月)


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第241回 日本最高地点の地ハイ雲取山(標高2017m)  8月19〜20日

 下界では残暑のきびしい時期でしたが、さすがに標高2000mの山の上は涼しく、大自然の中でじっくりと地学を学びました。本格的な山にいって見たいという参加者の希望もあり、この雲取山での地学ハイキングとなりました。
 さて計画したのはいいものの心配なのは、果たして全員無事に登ることができるのか?ということです。参加者は若手とはいえない方が多く(?)登山の経験のはとんどない方もいる‥‥‥。案内者からは「いざという時は自分が下まで背負っていく」という頼もしい発言までとびだしました。しかし係・案内者の心配するようなことはなく、逆に「係は最後まで疲れちゃいけない。」と励まされたり(?)、先頭の案内者を追い越して早々に山小屋に着いた高校生がいたりと、全員元気に登りました。  地学ハイキングですので石もしっかりと見ました。この地域に分布する秩父帯南帯と四万十帯の地層を見学し,二日目には鳥の巣式石灰岩の露頭で化石採集をしました。そしてその化石をおみやげに全員無事に下山することができました。
 標高2017mでのハイキングというのは普及巡検としては日本の最高地点のものでは?との声もあり、いよいよ埼玉支部の地学ハイキングも実施回数だけでなく見学地点高度も日本一になってきた!といえます。

{岡野裕一}(参加者19名)

雲取山頂で記念写真

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第242回 吉見丘陵のザクロ石と磨き砂  1990年10月21日

 吉見丘陵は関東平野にある、島のような孤立した丘陵です。第三紀層と結晶片岩、片麻岩が分布しています。
 第三紀層には有名な「吉見の百穴」遺跡があり、凝灰岩はかつて磨き砂(クレンザー)として採掘されていました。片麻岩には小豆色のガーネットを含みます。
 今回はこれらの採取も計画しました。採集したガーネットは宝石だと聞き、大喜びの参加者もいました。

(参加69名)

造成地でガーネットを探す

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第243回 晩秋の秩父・長尾根 1990年11月25日

 秩父の高位段丘、長尾根(尾田蒔丘陵)に登っていきます。途中、農家の軒先に吊された干し柿や、秩父盆地南縁の断層が浸食されてできた三角末端面の地形を見たり、植物の説明を聞きながら目的の露頭にたどり着きました。
 見事に成層した白やオレンジ色の軽石層やクラック帯が見られ、これらには“ハムサンド”や“食パン”、“五目ケチャップ”等という愛称がつけられています。このローム層は関東ローム層の中でも古い(30〜50万年くらい前)ものだということです。
 現在、長尾根はミューズパークの造成中で、あちこちにローム層の露頭があり、“ハムサンド”や“食パン”が確認できました。ミューズパークで昼食をとり、「わんがけ」をして鉱物を見ました。
 その後、佐久良橋に下り、第三紀層を浸食している荒川を見て、河岸段丘を西武秩父まで歩きました。

(参加34名)

造成地のローム層を観察

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第244回 初冬の入間川を歩く  1990年12月26日

 今回のコースは昨年度の春にも歩いたコースですが、昨年度とは逆に下流から上流にさかのぼってみました。最初は西武線の鉄橋下で仏子層とそれに挟まる亜炭層を観察しました。ここでは材化石や植物の葉・球果の化石がとれました。特にメタセコイアやオオバラモミの球果化石のよいものがたくさんみつかっていたようです。その後は以前みた地点とほぼ同じでしたが、同じ場所でも見方によっていろいろと新しい発見があります。
 さて今回の目玉は入間川の河原での礫種調査でした。参加者がただ説明を聞くだけでなく、自分たちで何かを調べるということで、みんな熱心に取り組んでいました。今後もこんな形の地ハイを行っていく予定でいます。

(参加42名)

西武線鉄橋下流で化石採集

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第245回 沖積低地の地学(宮代〜幸手) 1991年1月20日

 1991年最初の地ハイは人間の生活の場である沖積低地を歩いてみました。ふだんは何げなく歩き、見ているものを地学の目でみるとなかな興味深いものでした。
 初めは高野の河畔砂丘の見学です。ここでは河畔砂丘とその下に埋没している堤防の堆積物をみましたが、この堤防が人工のものか自然のものか?ということが露頭で議論になりました(結局結論は不明‥‥)。
 午後は幸手団地に移動し、地盤沈下の調査をしをしました。つけたした階段の数を数えて沈下量を調べる方法で、参加者全員が班に分かれ団地内を分担しました。
 なお今回は地ハイ終了後に春日部で新年会を行いました。約30名もの参加がありました。地ハイに対するいろいろな要望が聞かれ、楽しい会でした。

(参加46名)

高野河畔砂丘
砂丘に埋没した堤防について激論

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第246回 水温む早春の足柄 1991年3月17日

 今回は埼玉県をはなれ、神奈川県での地ハイです。足柄団研の調査地域であった(もう調査は終わっている)足柄地域です。新宿駅に朝8時に集合、さらにそこから2時間近くかかって御殿場線の谷峨駅まで行きました。隣の駅は静岡県、時間がかかるわけです。
 この地域に分布するのは第三紀層の足柄層群で、礫岩か主体の地層で砂岩や泥岩をともなっています。第1地点は礫岩の少ない部分で、ここでは化石がふくまれていました。第2地点・第3地点と礫岩が多くなりますが、第1地点のものとは礫の種類が違っていました(花崗岩の礫が目立つ)。丹沢山地の隆起と関係があるようです。なお足柄地域の地質(や足柄団研)については平凡社の「日本の自然9 列島のおいたち」のpp.27-40に詳しく紹介されています。興味のある方はぜひ御一読下さい。

(参加37名)

第1地点で化石採集

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第247回 自分の歯にみる人類の歯の進化と退化
         +日曜地学の会総会 1991年4月14日

 毎年4月の地ハイは「日曜地学の会」総会が行われます。今回は県立富士見高校を会場とし、午前中に総会を行いました。1990年度の地ハイの報告・1991年度の地ハイの計画についての提案を行い、その後は「スライドでふりかえる1990年度の地ハイ」、1年間の地ハイをスライドでみながら復習をしました。最後に地団研東京総会でのポスターセッションと地ハイの250回記念品についての意見交換をしました。
 午後は「歯」についての講演と実習です。地団研東京支部の後藤会員による講演「自分の歯にみる人類の歯の進化と退化」、その後地ハイ参加者の歯科医矢崎さんにもお手伝いしてもらい歯型の模型作りの実習を行いました。できあがった自分の歯をおみやげに、4時すぎに解散となりました。

(参加39名)

歯型の模型の作り方を学ぶ

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第248回 深緑の越生路をいく 1991年5月19日

 今回は西部地区の越生にきました。歴史の古い町で、人口に対する文化財の多さは県内第2位といわれているそうです。
 この地域には御荷鉾緑色岩類と、その上に異地性の岩体としてのるといわれている秩父層群の岩石が分布しており、これらを越辺川に沿って歩きながら観察していきました。御荷鉾緑色岩類は火山岩や火山砕屑岩・深成岩などが変成してできた岩石で、全体に緑色をおびています。その細かな特徴から、もとの岩石がどんなものであったかある程度判断することができます。秩父層群の岩石はチャートや黒色の粘板岩などでした。Loc.5では御荷鉾緑色岩類の上位に秩父層群の岩石がのっていたのですが、その間に断層らしきものはみられませんでした。問題のある露頭であると思います。
 最後に越生駅近くの越辺川(おっぺがわ)川原で礫調査と川の流量調査を行いました。礫調査は昨年の入間川につづいて二回目です。流域の地質を反映し川原の礫の種類が異なっていることがはっきりと確かめられました。

(参加57名)

越辺川の川原で礫調査

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第249回 初夏の川本町をたずねてく 1991年6月23日

 都合により一週間延期となった今回、突然の変更で御迷惑をおかけしました。この場をかりてお詫びいたします。さて延期をした6月23日は朝から雨模様、参加者ほ集まるだろうかと心配しましたが、少しの雨ぐらい関係ない!という方々が集まってきました。さすが地ハイの参加者はたくましい!といったところです。
 まずは荒川の河原で化石採集、小雨の中みんな必死でとっていました。ここの地層は土塩層という地層で、きれいな形の化石は少ないのですがいろいろな種類のものがみられました。貝化石の他、生痕化石(巣穴の化石など)もありました。昼食の後は福田層の凝灰岩層や角礫岩層を見学しました。角礫岩の礫には花崗岩の礫が多くみられ、興味深い角礫岩でした。

(参加30名)

雨にも負けずに化石採集

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第250回 金勝山 250回記念
        地学オリエンテーリング
 1991年7月21日

 今回は記念すべき250回、そこで特別企 画として地学オリエンテーリングを行いました。オリエンテーリング形式の地ハイは今までも何度か行ってきましたが、今回は特別企画ですので、豪華賞品を用意しました。
 猛暑の中、沢山の人が集まりました。東武竹沢駅前で常連の方を中心に班作りをし、早速スタートです。今回の課題は、歩測での距離の測定、岩石・鉱物・山そして植物の名前を答えるなどで、みんな暑さを忘れてとりくんでいました。
 昼食後、「小川少年自然の家」の広場で表彰式、第一位のグループには地団研の「地学ハンドブック 火山灰分析の手引き−室内編・野外編−」が贈られました。
 その後は少年自然の家でプラネタリウムの見学、椅子に座り冷房のきいた真っ暗な部屋のなか、どこからともなく聞こえてきたのは誰かの寝息‥‥‥。
 暑いなかみなさんご苦労さまでした。次は300回めざしてがんばりましょう。

(参加55名)

「小川少年自然の家」の本館前で記念写真
「小川少年自然の家」の広場で表彰式

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