地学団体研究会埼玉支部 
  HP版 「みんなの地学」 自然と人間 No.13

 縄文時代の石器の石材②
  石皿の石材

松岡喜久次,2026年 4月 2日  


 石器の一種である石皿は、磨石とともに使用して木の実などを磨りつぶす道具です。石皿は扁平な形であり、磨石はやや扁平で丸く、手で握れる程度の大きさをしています。石皿には磨痕や擦痕がみられ、磨りつぶすのに使用されたことがわかります。そのため、中央部が浅くへこみ、多くの緑泥石片岩製石皿では穴がみられます。

縄文時代の石皿と磨石  緑泥石片岩製石皿と閃緑岩製磨石
左:入間市の坂東山遺跡(入間市博物館アリット)    右:三芳町の俣野遺跡(三芳町立博物館)

 石皿には閃緑岩や安山岩も利用されています。閃緑岩や安山岩は硬質のため、石皿のへこみは浅く、穴があるものはみられません。それに対して、緑泥石片岩は軟質のため、使用により穴ができてしまったのでしょう。

縄文時代の石皿と磨石
左:閃緑岩製石皿,狭山市西久保遺跡(狭山市立博物館) 右:安山岩製石皿,
鳩山町の虫草山遺跡(鳩山町多世代活動交流センター2F 出土品展示室)

石皿の石材利用傾向
(志木市西原大塚遺跡)
緑泥石片岩製石皿,西原大塚遺跡
(志木市立埋蔵文化財保管センター)

 緑泥石片岩製石皿の表面に小さな斑点がみられます。この斑点は長石の点紋で、   小川町の下里に分布する緑泥石片岩にみられる特徴的な岩石です。そして、点紋のみられる緑泥石片岩製石皿は、埼玉県の各遺跡からみつかっています。点紋のみられる緑泥石片岩の石材は、寄居町や長瀞町にもありますが、遺跡に近い場所である小川町下里地域から採石されたものと考えられます。

緑泥石片岩製石皿(川越市立博物館)と石皿の表面にみられる小さい斑点(点紋)
点紋のみられる緑泥石片岩製石皿,
飯能市八王子遺跡(飯能市立博物館)
 
報告の石皿の遺跡()と緑泥石片岩の露頭(

 埼玉県南部の遺跡から産する石皿の石材では緑泥石片岩が多く、石墨片岩は極めて少ないのです。小川町の下里には緑泥石片岩と黒色の石墨片岩が分布しています。緑泥石片岩は石墨片岩に比べて、板状でしっかりしていることから、縄文人は石皿として利用することを知っていたのでしょう。
 東京都では片岩の石材利用傾向が低くなり、閃緑岩や砂岩などの身近な石材が利用されたのでしょう。また、打製石斧の石材利用傾向では、硬質なホルンフェルスが利用されています。縄文人は石器を作製するために石材を選んで利用していたことがわかります。


石皿の石材利用傾向
(東京都東村山市の下宅部遺跡)
打製石斧の石材利用傾向
(志木市西原大塚遺跡)


引用文献
 ・ 松岡喜久次(2024)埼玉県の縄文時代の石器の石材と採取地 -打製石斧,石皿,磨石および凹石-.埼玉県立川の博物館紀要,25:21-32.
 ・ 松岡喜久次(2026)埼玉県から神奈川県にかけての縄文時代の石皿-閃緑岩,安山岩および結晶片岩の石材採石地-.埼玉県立川の博物館紀要, 26:53-64.


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